心の闇を段組み延々500ページに亘って綴った漆黒の重い暗い小説。
作家が伏せてあれば新堂冬樹にも似た黒い描写を不思議と朴訥なイメージを持っていた重松清が描いており、作家の多面的な才能に感服しつつ読み終えました。
終始、第3者の目線であらゆる不幸を背負ったような家族像を軸に、主人公をおまえと称し、そのおまえの放火した兄、そのおまえの浮浪者となった父、そのおまえの血の通わない家族、そのおまえの開発途上で破棄された故郷、そして常に死を纏い虐げられ人殺しとなったおまえが死ぬ物語でしたね。
絶望とは悲惨な体験が生むのではなく、未来に何も託せない事。なるほど、唯一ここが残った作品。しかしイマヒトツ感は拭えず、聖書の一節が所々書き綴られていることも理解し難い。
ブラウザ三国志に耽る日々で、久々がこれでは若干不満。