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八日目の蝉

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先日のジョゼにえらく嵌ってしまい、ツタヤに足を運びDVDを物色中に目に留まった八日目の蝉。数年前に読んだ小説でラストの号泣をを思い出し、つい手に取ってました。
”そして父になる”とは異なる視点から親子とは?を問う、血縁でない母子愛を痛烈に表した感動作。
角田光代の細いタッチで綴られた原作よりも執拗に母子愛を強要しているようで、原作抜きに映画を観た場合にストーリーを理解できるかは疑問が残るものの、原作以上に泣けるラストは絶品。
ただ肉親の描かれ方があまりに痛々しく、受容れない物憂げさが”そして父”よりも色濃く、血の繋がりが返って物悲しさを色濃く表現されたように思いますた。

ジョゼと虎と魚たち

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滅多に見ない恋愛ものですが、妻夫木聡と池脇千鶴の演じ手が特筆もので、50男のハートをチクチクした珠玉の作品。
迂闊にも池脇千鶴をついググってしまう軽薄さが露呈した休日でした。

永遠の0

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永遠とは語り継がれていくべき悲壮であり、特攻で無くなった方の渾身の意思であり、ゼロとはゼロ戦、死をもって開放される特攻員の痛切な心情、という風に感じ取れた永遠の0。

アイドル風情と重厚な俳優人を配することでうまく調和し、特にその遺作となった夏八木勲の台詞回しは圧巻。

戦争のもの悲しさを144分の全編をとおして宮部という人物の心根を探ることで写しだされ、部下として教え子としてライバルとしての語部たちの回想録に現れる人物像に強く心を打たれた作品。

1月中旬にも拘らず、半分以上埋まった館内にむせび泣く声が響き続けた感動の一本でした。

異邦人の夜

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在日の差別感情を余す事無く書ききった梁石日(ヤンソクイル)の異邦人の夜、読み応えのある一冊でした。
冒頭から見下したように日本人、政治家・暴力団を論うように書き殴り、不法滞在フィリピン人女性の日本人への執着と、在日2世を自覚し自己喪失した娘と、過去に苦悩する在日韓国人の父親の、その両面から延々500ページ以上に構成した長編小説。

根底にある差別感情を文字に起こすと、こうまで汚い日本人を描けることに不思議と違和感はなく、逆に在日の耐え難い差別意識を美化するでもなく、その狭間に生きるカタワな心情を軸に存在意義であるとか人権規約であるとか新しい世界観に触れたようで新鮮に読み終えました。

忙しさに感けて久々の一冊でした。

心に龍をちりばめて

GW中のちょこっと空いた時間で読み終えました。安心感を持って読める白石先生作家はすらすらと。
美貌の女とヤクザな男とエリート男の絡んだ内容。
読み進むにつれて紐解かれる各々の過去と実情がドラステッックな描かれ方で、読み手を引込むには十分納得できる、女性作家には描ききれない[ 女とは? ]への回答が主軸にあり、嫉妬と打算と愛憎を如実に描き切った作品。
珍しく抑揚のある展開に満足して読めました。

火口のふたり

字面が知的で、抑揚の無い中に安堵感のある、何某か深みのある小説が多い白石一文は結構好きな作家で、何度も読んだ事があり、今回もスラスラ読み終えました。

従兄妹同士の交接と東日本大震災がらみのそれなりの18禁小説といったとこ。

[いまやりたいことをやっていると未来を失い、明日の為に今日を犠牲にしたとき立派な過去が生まれる]

立派な過去を残せてない自分、骨身にしみる一言でした。

夢をかなえるゾウ 2

突飛な進展が面白く、解り易く生き様を問う質のよいを前作でしたが・・・・
流石に神と人間による漫才グランプリや釈迦と貧乏神との兼ね合い等、あまりの現実味のない無理無理捻じ込んでくる内容が妙に痛々しく筆者の意図的なものが見えすぎて、ある意味夢を叶えてくれなかった象でした。

正直残念。

反三国志

施しようのない見下げた内容でしたね、反三国志。
正史としての三国演義とは対照的に野史として存在することは興味深く理解しつつも、相当なC級ぶりに脱帽です。
1000ページ超の段組構成を1ヶ月かけて読んだ時間が心底無駄に思える粗雑なものでした。

さらに知人から譲り受けた”夢をかなえるゾウ 2 ”を期待して読み進んではいますが、前作と比べ鋭利さに欠けるなと。
学ぶべき事象が少なく、笑かそう笑かそうとする姿勢が垣間見えて、変に気持ちが乗らないまま、半分ぐらい読み終えました。

No Title

意味不明な大人寓話で全く分からない恩田陸[いのちのパレード]といつものシツコイ修飾語の羅列に辟易する大崎善生[別れの後の静かな午後]と立続けに読んでも腹一杯でないので、反三国志に手を出しました。

大好きな三国志の激甘仕立てに満腹になりそうです。

深紅

一家4人惨殺の加害者家族と唯一残った被害者遺族との関係の心理描写を中心に描いた小説。
筋立てとしては至ってシンプル、ただ内容はエグイ。
主人公、小学6年生の修学旅行中に突然肉親の不幸のために呼び戻される・・・・いつもどおりの斬新な切口から始り、その不幸たる両親兄弟のへの殺害方法は気持ち悪いほど残虐で、凶器である金槌を幾度となく顔面へ執拗に打ち付ける残忍な犯行描写に流石に引き気味。またその際の加害者側の心理状態を刻々と綴っており、これまた理解不能。
一人残された主人公が生きる価値を見出せないまま、死刑判決を受けた加害者の心根を探るうちに一人娘の存在を見つけ、本来出会うべきでない被害者遺族と加害者家族との奇妙な関係に復讐・同調と揺れる心情を描いた作品。
ちょうどテレビで”なぜ人を殺してはいけないか”とあって、これと変に交錯して訳わからんようになりました。

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