破線とは走査線により映し出された放送映像であり、マリスとは悪意、なるほど非凡さを物語るなかなかのタイトルで、まずまずの江戸川乱歩賞受賞作でした。
テレビ映像に潜む影を炙り出し捏造された報道被害に関わる人間関係を展開の軸に、加害者と被害者の位置関係が交錯し、大事な部分は不透明なまま終わった推理小説。
流された映像に誘導されるが如くメディア制作者の意図のままに色付けされた情報が行交う中で、歪められた事実を鵜呑みにする事の危うさを示唆し、情報提供媒体の脚色映像に浮遊し続ける由々しき事態に警鐘を鳴らす一作。
嵌められた女性映像編集者が偽郵政官僚から受け取ったビデオ映像に潜在する意図された含意を汲み取って事実無根な映像を創りあげ、そのスケープゴートにされた加害者らしきの郵政官僚が貶められる、それゆえ両者の倫理道徳を踏みにじる狂言的な行動が際立ち、真相は最後まで閉ざされたまま全編に亘り、であろう、じゃないか、というまさしく作者の意図する妄想に掻き立てられ覆された結末に納得と釈然とないものが残りました。