[大河の一滴]
同名の五木寛之作品と堂々と渡り合う"大森 黎"の埋もれた秀作だなと。障害者を支える障害者とその義母の、重く赤裸々な心情を描いた小説。健常者と障害者の間の本来あってはならない同情や哀れみに似た賎しい偽善感、ただその感情は現実として存在し、時として憂き目を被り不遇に処している障害者の方の砂を噛むような真実。
[世の中にショウガイシャがもっと増えれば、逆にケンジョウシャがショウガイシャといわれるようになる。だからこの子には本当に生まれてほしかった。]障害を持つ妻の流産に際した障害者の夫の言葉、心の奥底を掻き毟られるような思いで読み進めました。
[諸葛孔明]
陳 舜臣によって描かれた天才軍師の生き様を上下巻で綴った歴史書。
あくまで諸葛孔明を軸に、横山光輝や吉川栄治の三国志観ともまた異なるそれぞれの心情、言説、時代背景を史実に忠実(?)に仕上げた薄味の歴史書。
戦乱の世を真正面から実直に見据え、志半ばで五丈原に散った諸葛亮の悲劇性を中心に、赤壁、長坂、成都制圧などの心躍る戦いの事は小ざっぱりと、龐統・関羽・張飛・劉備の死もそれなりに描かれてました。
写真は極太のもじゃもじゃで。